お返しの心理について書こうと思います。
これは、人間の生き方や社会のルールに深く反映された心理です。
知るだけではなく活用したほうがいいです。
人はお返しの心理で動くといっても過言ではありません。
もし、人があなたに親切にしてくれたらどんな気分になりますか。
状況によって可笑しがったり、怪しがったりするかもしれませんが嬉しい気分は必ずあるはずです。
それと同時にできることがあれば何かをしてあげたい、お返しがしたい気持ちになる。
お返しの心理です。
この心理状態は心理学用語では好意返報感と呼ばれています。好意返報性と呼ばれることもある。
一方、もらってばかりだとどんな気分になりますか。
何もしてあげられないという罪悪感と早くお返しがしたいという焦りが出てきます。
これは居心地が非常に悪い心理状態です。
この心理状態は心理学用語では心理的負債感というものです。
心理的に返さなければいけない借りがあるという状態です。
実は好意返報感や心理的負債感によるお返しの心理は人間関係を良くする、深める、いい関係を長く維持するために日常的に自然に活用されているものでもある。
また、説得効果も高いのでビジネス業界でも広く活用されている。
お返しの心理がビジネスで活用されているイメージしやすい例は、ご存知のスーパーなどでやっている試食、化粧品の無料お試しサンプル、気に入らなかったら返品可能という商品などです。
買おうと思って店に入った訳でもないのに無料の試食を勧められて食べてみたら美味しければ買ってしまうことはありませんか。
試食さえ勧められていなければ買いたいと思ったものだけ買って帰ったはずなのに美味しいものを勧めてくれたお返しとして買ってあげないといけないという気になる訳です。
それが試食の量が想像以上に多かったり、普段高い値段で販売されているものだったり、あるいはお年寄りの人や感じの良い人が勧めてきた場合さらに説得効果が上がる。
お得感が嬉しい反面、お得させてもらったお返しに買おう、使ってみようという気持ちになる。
このようにお返しの心理を活用すると説得力が格段に上がることは想像しやすいことです。
その説得効果は心理実験でも証明されています。
パメラ・レーガンという心理学者により行われた実験では相手にコーラーを奢る、コーラーを奢らないという2つの条件で結果がどのように変わるか見ています。
2人1組の実験チームを作ります。その内1人が仕掛け人です。
そして、まず偽の心理実験を行い、途中で休憩時間を設けます。休憩時間で仕掛け人の人が実験の第一条件であるもう1人にコーラーを奢ります。
そして偽の実験が再開します。
このように第二の条件である休暇時間にコーラーを奢らない実験も実施します。
実験終了後にコーラーを奢った仕掛け人が差し入れのコーラーの2倍の値段もするチケットを購入してくれないかとコーラーをもらった人に尋ねます。
その結果、差し入れでコーラーをもらった人の方がチケットを購入していたという実験です。
つまり、差し入れしてもらった心理的負債感によるお返しがしたいという気持ちが購入を促す説得効果をもたらしたと言えます。
ビジネスはお金がものをいう世界だと思われがちですが最終的に恩返しやお返しが差を生む大きな要素なのです。
ただ、注意しないといけないこともある。
実はお返しの心理は詐欺師が盛んに活用しているとも言われている。
例えば、無料の試し商品をもらった人にどんどん別の商品を売りつけにきたり、最初は優しく接して何か返さないといけない心理状態を作っておいて高額な商品を買わせたりなど悪用されているケースもあるようです。
お返しの心理も大事ですが、怪しいと思えば借りを作らないことも大事だと思います。
今回紹介したお返しの心理を活用する方法と合わせて人間の一貫性を求める心理を活用したフットインザドアという交渉テクニックも読んでみてください。